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「荒廃農地」と「耕作放棄地」。定義の違いと、再生の可能性を知る
多くの方がまず探されるのは、整備の行き届いた使いやすい農地ではないでしょうか。
しかし現実には、好条件の農地は地域内で既に担い手が決まっていたり、
なかなか空きが出なかったりすることも少なくありません。
こうした土地は一見「難しい物件」に映りますが、
実は土地の質が悪いわけではなく、単に「大切に引き継いでくれる担い手」を待っている場所もたくさん眠っています。
深刻な担い手不足という農業課題に直面している今の時代だからこそ、
こうした農地を選び、地域や行政のサポートを受けながら再生させていくことも、選択肢の一つと言えるでしょう。
地域と協力して活用していくための考え方を整理してお伝えします。
1. 実は違う? 「荒廃農地」と「耕作放棄地」
農業への一歩を踏み出すとき、目にすることが多いこれら2つの言葉。
結論から言うと、この違いは「持ち主の気持ち(主観)」か「見た目の状態(客観)」かにあります。
| 比較項目 | 耕作放棄地 | 荒廃農地 |
|---|---|---|
| 判定の基準 | 主観的(持ち主の意向) | 客観的(見た目の状態) |
| 主な目的 | 国の現状把握(統計) | 解消・活用の判断(実務) |
| 調査の方法 | 農林業センサスにおけるアンケート回答(自己申告) | 農業委員会による毎年の現地調査(利用状況調査) |
■ 耕作放棄地(主観的な統計用語)
「耕作放棄地」とは、5年ごとに行われる「農林業センサス」という統計調査で使われる用語です。
これは、農地の所有者や耕作者に対して行うアンケートに基づいています。
【定義】
所有者が「過去1年以上作付けしておらず、今後数年間も作付けする意思がない」と回答した農地。
【基準】
持ち主の「もう作りません」という意思(主観)によって決まる数字です。
見た目がまだ綺麗で明日からでも耕作できそうな土地であっても、
持ち主が「もうやめる」と言えば、それは統計上「耕作放棄地」に分類されます。
逆に、草の生い茂った農地でも、持ち主が「いつか作る」と言い張れば、ここにはカウントされません。
※出典:千葉県 遊休農地・荒廃農地とは
■ 荒廃農地(客観的な実態用語)
一方で「荒廃農地」は、市町村の農業委員会が毎年行っている「農地利用状況調査」などで使われる用語です。
【定義】
現に耕作されておらず、かつ、通常の農作業(耕うん、整地等)では作付けが不可能な状態にある農地。
【基準】
農業委員会の担当者が実際に現地へ足を運び、「見た目の状態(客観)」で判断します。
※出典:滋賀県 遊休農地・荒廃農地の概要
【補足】遊休農地という言葉
「耕作されていない農地」のうち、農業委員会から「もっと有効に使いなさい」と指導や勧告の対象になる土地を指します。
2. 荒廃農地にもランクがある?「再生できるか」の分かれ道
新しく農地を借りることを検討する際、特に知っておきたいのが「荒廃農地」の分類です。
国はその深刻度によって、大きく2つのランクに分けています。
この分類を知ることで、その土地をどのように活かしていくかの見通しを立てやすくなります。
| 比較項目 | A分類(再生利用可能) | B分類(再生利用困難) |
|---|---|---|
| 現況 | 抜根・整地等の比較的軽微な作業で再生利用が可能な状態 | 森林化・斜面崩壊等により物理的な農地復旧が困難な状態 |
| 活用方針 | 地域計画に基づき、効率的な担い手への集約化を推進 | 森林・放牧地への転換、非農用的活用を柔軟に検討 |
| 活用例 | 補助事業の活用による大規模経営基盤の構築 | カーボンクレジット等の環境ビジネスへの転用 |
(出典:農林水産省 北陸農政局 資料をもとに作成)
A分類(再生利用可能)
【状態】
雑草は生えているものの、比較的軽微な作業(抜根や整地)をすれば、再び農地として使えるようになる土地。
【活用のルール】
国は現在、このA分類の土地を「地域計画」(人・農地プランの法定化)に基づき、
法人などの担い手へ優先的に集約しようとしています。
B分類(再生利用困難)
【状態】
すでに周囲が完全に森林化していたり、斜面が崩壊していたりと、
農地に戻すには多額の費用と時間がかかり、物理的に困難な土地。
【活用のルール】
無理に農地として再開させるのではなく、
森林へ戻したり、放牧地や、条件が合えばカーボンクレジット創出のための植林地として活用する方針が取られています。
※出典:農林水産省 北陸農政局 広報誌「しなちょ」
3. 荒廃農地を再生するための「公的支援制度」
第2章で触れたA分類のような、再生可能な農地がまとまった面積で新しい担い手を待っています。
こうした土地と向き合い、再び蘇らせるために、
国や自治体は「共に課題に取り組むパートナー」への支援を用意しています。
■ 国による支援の方向性
国(農林水産省)は、地域の農地を効率的に利用するため、意欲ある担い手への支援策を設けています。
【再生利用に向けた初期活動の支援】
荒廃農地(A分類)の再生に必要な障害物除去や土壌改良に対し、
一定の要件を満たす場合に支援が受けられる仕組みがあります。
【長期的な営農に向けた基盤整備】
自治体等と連携し、地域計画に基づいて農地を使いやすく作り替える(区画整理等)ための公的事業も進められています。
※出典:農林水産省|令和8年度農地利用効率化等支援事業
:農林水産省|農山漁村振興交付金 最適土地利用総合対策 令和8年度拡充 荒廃農地再生支援事業
■ 自治体ごとのサポート体制(一例)
都道府県単位でも、地域の特性に合わせた独自の支援が行われています。
【和歌山県】耕作放棄地解消への直接支援
荒廃した農地を再生し、継続して10年間耕作を行うことを条件に、
解消作業にかかる経費や苗木・資材の導入を支援する事業などを展開しています。
※出典:和歌山県|耕作放棄地解消への支援
こうした制度は、あくまで「地域の将来に貢献しようとする姿勢」に対して用意されているものです。
決して自動的にお金がもらえるわけではありませんが、
本気で取り組む人にとって、こうした公的支援は非常に心強い後押しとなります。
※支援内容は年度ごとに更新されるため、最新の公募状況は各自治体へご確認ください。
4. まとめ:農地のポテンシャルを、次世代の実りへ
「荒廃農地」や「耕作放棄地」という言葉には、どこか近寄りがたいイメージがあるかもしれません。
しかし実際には、土地の質自体は悪くなくても、
担い手不足や地域の状況変化によって、
やむを得ず耕作が途絶えてしまった農地も多く存在します。
たとえ今は草が生い茂っていても、
国によって「再生できる」と分類されている場所には、再び田畑として実りをもたらすポテンシャルが備わっています。
だからこそ、国や自治体も「一緒に取り組んでくれる担い手」を求めて、
さまざまな支援の仕組みを用意しています。
最初から整備された農地を探すのはもちろん王道ですが、
こうした農地を地域の方々と協力して蘇らせていくことも、今の時代における有力な選択肢の一つです。
今は草だらけの場所も、適切な準備と地域の協力があれば、
数年後には豊かな農地に変わり得ます。
そんな新しい農業参入の形があることを、本稿を通じて知っていただけたなら幸いです。
農地探しをさらに効率化するために
農地を探す際には、「荒廃農地」「耕作放棄地」に限らず、
どこに、どのような状態の農地があるか、情報を事前に得ておくことで、効率グッとがあがります。
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