
スマート農業と人手不足の課題に挑む日本の農業最前線
執筆者:髙木 憂也
メガデル運営(株式会社タカミヤ)
日本の農業は、少子高齢化や労働力不足に直面する中、これまでのやり方を抜本的に見直す必要に迫られています。その解決の糸口として期待されているのが、「スマート農業」と「人手不足対策」の融合です。
本記事では、実践事例や政策、技術の進展を交えながら、これからの農業を担う方々に役立つ情報をお届けします。
スマート農業の最新技術と事例
スマート農業とはロボット・AI・IoTなど先端技術を農業に活用する取り組みで、作業の自動化・効率化や高精度化を目指すものです。
具体的には、自動運転トラクターや収穫ロボット、リモコン式草刈機といった「ロボット農機」の導入、ハウス内環境を自動制御するシステム、営農管理クラウド、家畜の健康モニタリングなど、多岐にわたる技術が含まれます。
こうしたスマート農機により、田植えや収穫の無人化が現実のものとなり、熟練者でなくとも正確な作業が可能になります。また、ドローンや圃場センサーによって土壌水分や作物の生育データを収集・分析し、病害虫の予測や収量予測に役立てる精密農業(データ駆動型農業)も普及し始めています。
自動運手トラクター「アグリロボ」
例えばAI画像解析により作物の葉色や形状から病害虫を早期検知し、被害を未然に防ぐ試みも実用段階にあります。北海道の大規模農場ではクボタ社の自動運転トラクター「アグリロボ」が人手を介さず圃場を耕うん・田植えする実証が行われており、小規模農家向けにはスマホ一つで温度湿度を最適化して収量を2割向上させた温室AI制御システムの例も報告されています。
政府もスマート農業の推進に本腰を入れており、スマート農業技術活用促進法が2024年10月に施行されました。この法律では、生産現場と技術開発の両面で計画認定制度を創設し、認定を受けた農業者・サービス事業者は税制優遇や低利融資などの支援措置を受けられます。
例えば、自動収穫ロボットを活用するため圃場の作付体系を見直す計画や、新たなスマート技術の開発・普及計画を国が認定し、設備投資減税や公庫融資で後押しする仕組みです。さらにスマート農業技術に適した生産方式への転換を地域ぐるみで進めることで、多様なプレーヤーの参入も促そうとしています。
スマート農業事業は年々拡大傾向
実際、スマート農業市場は年々拡大傾向で、2024年度の国内市場規模は前年度比9.9%増の約331億円に達する見通しです。衛星やドローンによるリモートセンシング技術と可変施肥システムの普及により、高騰する化学肥料を節減しつつ、生育不良な箇所にピンポイントで追肥する精密管理も広がっています。
農薬散布ドローンは積載量が向上し、大面積の防除も効率化。これらの技術導入により作業時間の大幅短縮やコスト削減が実現でき、人手不足の解消や生産性向上に直結すると期待されています。
2030年度にはスマート農業市場が約788億円規模に倍増する予測もあり、ロボット・AI・IoTが拓く新時代の農業は着実に現実化しつつあります。
深刻な人手不足への対策(外国人材・地域連携)
人手不足は日本の農業において喫緊の課題です。農業就業者数の減少と高齢化が同時進行する中、担い手確保のための様々な対策が講じられています。まず、外国人材の受け入れ制度改革です。これまで農業分野では外国人技能実習生が実質的な労働力補完の役割を果たしてきましたが、制度の問題点(転職不可や人権問題など)が指摘され、政府は2024年に技能実習制度を廃止し新たな「育成就労制度」へ移行する方針を打ち出しました。
この新制度は2027年開始予定で、農業を含む人手不足が深刻な12分野で外国人がより長期に就労し技能を身につけられる仕組みに再編されます。具体的には在留期間の延長や転職の柔軟化、日本語要件の明確化など、より「労働力確保」と「人材育成」に重きを置いた内容になる見込みです。既に農業特定技能制度では一定の技能・日本語能力を持つ外国人が最長5年間就労できる枠組みがありますが、新制度ではより長期(10年超)の在留や家族帯同も視野に検討されています。将来的には海外からの技能実習ではなく、対等な就労者として外国人が地域農業を支える時代が来るかもしれません。農家にとっても、意欲ある外国人を戦力として迎え入れやすくなることが期待されます。
地域社会との連携強化による労働力確保
さらに重要なのが、地域社会との連携強化による労働力確保です。過疎化した農村では農繁期に人手が足りず耕作放棄地が増える悪循環がありますが、地域ぐるみでこれを支える動きも出ています。例えば都市住民や地元の若者を募って農業体験イベントを開催し、季節的なアルバイトやボランティアとして農作業を手伝ってもらう試みです。
愛知県豊明市では食用花(エディブルフラワー)の収穫体験イベントを開き、都市住民との交流を通じて農業への理解と協力者を増やしています。岩手県花巻市ではJAいわて花巻が農家民宿(ファームステイ)を運営し、都市からの滞在者に農繁期の手伝いをしてもらいながら農村暮らしを体験してもらう取り組みを行っています。また、高知県馬路村では特産の柚子をテーマに地域おこしし、ジュース工場での短期雇用や特産品開発への住民参加を促すことで、地域ぐるみで農業を支える体制を築いています。
このように「地域の人材を農業に呼び込む」施策は、新たな労働力確保と地域活性化の一石二鳥となり得ます。加えて、地元の高齢者や主婦、障がい者の力を農業に活かす農福連携・地域協働も注目されています。徳島県のある農場では、収穫物の袋詰めやシール貼りといった軽作業を高齢者・障がい者に委託し、農家の負担軽減と就労支援を両立しています。静岡県浜松市の株式会社京丸園では25名の障がい者を年間通じて雇用し、労働力を安定確保するとともに黒字経営を達成したケースもあります。このような地域コミュニティとの協力体制は、農業の人手不足解消だけでなく社会全体の包摂と活力向上にもつながる素晴らしいモデルです。
様々な農業の課題をサポートする「メガデル」
新しい視点での人手不足対策として、異業種連携やプラットフォーム活用も挙げられます。例えば建設業の人手と農業の季節労働とをマッチングするサービスや、副業人材を農繁期だけ受け入れる仕組みなどです。
2024年7月に私どもは「MEGADERU(メガデル)」を開始しました。生産者と農業用ハウス施工会社を結ぶオンラインプラットフォームです。これはビニールハウス建設・補修の発注をWeb上で直接マッチングできるサービスで、生産資材の高騰や担い手不足といった農業界の課題解決に資するものとして提供されています。施工会社側も繁忙期・閑散期に応じて協力し合える仕組みが備わっており、人手不足の解消や収益安定化が期待できます。このようにデジタルプラットフォームを活用した労働力シェアの動きも始まっており、今後さらなる異業種からの支援や参入が進めば、農業の人手不足問題に対する新たな解決策となるでしょう。
技術と地域が支える持続可能な農業へ
スマート農業の技術革新と人手不足に対する多面的なアプローチにより、日本の農業は持続可能性に向けた大きな一歩を踏み出しつつあります。重要なのは、こうした取り組みを自らの農場や地域にどう適用するかという視点です。補助制度やプラットフォームを活用し、小さく始めて大きく育てる。その積み重ねが、次の世代に引き継ぐ強い農業の礎となるでしょう。

メガデルであなたの理想の栽培設備を依頼しませんか?
- ご利用は簡単3STEP !!
- ① 会員登録(お名前や住所、連絡先など)
- ② 施工依頼内容を登録・依頼
- ③ 施工会社から応募が届く
出典:朝日新聞デジタル|「米を安く作る努力も技術も必要」スマート農業で描く農家の未来
出典:JAcom|2024年度スマート農業 国内市場規模は331億円の見込み
出典:農林水産省|スマート農業技術活用促進法について
出典:bp‑Affairs|日本国内のスマート農業市場はおよそ5年で倍増する勢い
出典:HSAC|制度改正でどう変わる?農業と外国人労働
出典:Hakky Handbook|スマート農業と地域連携の実践
出典:Agrist|昼夜問わず野菜を自動収穫、AI管理の「ロボット農場」
出典:Hakky Handbook|【2024年版】農業の人手不足を解決|スマート農業と地域連携のすすめ