
台風シーズンに備えるビニールハウス補強・修繕チェックリスト
執筆者:髙木 憂也
メガデル運営(株式会社タカミヤ)
ビニールハウスが台風で受けやすい主な被害
ビニールハウス(パイプハウス)は強風に特に弱く、被害の約8割以上が台風や強風による「風害」です。代表的な被害としては以下のようなものがあります。
被覆フィルムの破損・飛散: 強風でビニールがはがれたり破れたりし、ハウス内に雨風が吹き込む被害。フィルムが飛ばされると内部の気圧が急上昇し、屋根全体が持ち上がって骨組みまで破壊される危険性があります。特に古く劣化したフィルムは破れやすく、台風前にたるみや穴がないか点検が必要です。
骨組みの変形・倒壊: 強風圧でハウスのパイプ骨組みが曲がったり倒壊する被害です。肩部(アーチと側柱の境)が大きく曲がるパターンが多く報告されており、最悪の場合ハウス全体が全壊することもあります。例えば2011年の台風15号では、静岡県内で簡易パイプハウスを中心に800棟以上が半壊・全壊する壊滅的被害が発生しました。骨組み自体の強度不足や腐食劣化があると被害が拡大します。
飛来物による損傷: 周囲から飛ばされた資材や瓦・木片などがフィルムを直撃し、穴を開けたり骨組みに当たって破損させるケースです。フィルムに穴が開くとそこから風が侵入して内部圧が高まり、被害が一気に拡大します。過去の台風では、飛んできたトタン板や看板でハウス側面が裂かれる例も報告されています(飛来物対策の重要性は後述)。
豪雨・浸水被害: 台風に伴う集中豪雨でハウス周辺の排水が追いつかず、床部分が浸水して作物が水没したり、地盤が緩んで基礎パイプが抜けやすくなる被害もあります。実際、台風時の豪雨で地面が泥濘み、アンカーの保持力が低下してハウス全体がずれたり浮き上がったケースも見られます。ハウス内の排水不良は作物根腐れなど二次被害にもつながります。
こうした被害は一度発生すると修復費用が莫大で、台風後の収量減とも相まって農家経営に大きな損失を与えます。近年は気候変動で台風の大型化傾向が指摘され、2019年の台風19号では農林水産関係の被害額が3,000億円超に及びました。したがって、台風シーズン前にハウスの脆弱箇所を見直し「壊れる前提」でなく「壊さないための備え」を講じておくことが肝心です。
被害を防ぐための具体的な補強・修繕ポイント
台風によるハウス被害を未然に防ぐには、「強風に耐える構造づくり」と「隙を作らない対策」の両面から補強・修繕を行うことが重要です。信頼性の高い農業団体や研究機関のマニュアルでも、局所的かつ効果的な補強を組み合わせて耐風強度を高めるよう推奨されています。以下、主な対策ポイントを具体的に挙げます。
筋交い・タイバーによる骨組み強化: ハウス内部に筋交い(ブレース)やタイバー(補強張り材)を追加してフレーム全体を補強します。具体的には、アーチパイプと棟パイプを斜材で連結してX字状に補強したり、アーチと側柱を結ぶタイバーを取り付ける方法です。簡易な追加補強でも有無で耐風強度に大きな差が生じ、妻面(ハウス端部)の弱点部位に斜め筋交いを入れれば奥行き方向の倒壊リスクも抑えられます。これらは大規模な工事を伴わないため生産者自身で比較的容易に実践可能な強風対策です。
アンカー増設・固定具の強化: ハウスの基礎固定を見直すことも重要です。脚部パイプが地中で緩んでいると強風時に引き抜かれ倒壊しやすくなるため、台風前に支柱脚の埋設状況を点検し、必要に応じて打ち込み式のアンカーペグやおもりを追加して固定力を高めます。実際、台風時は地盤緩みでパイプ保持力が低下しがちなので、補強杭の増設や差し直しなど徹底してください。またハウス基礎にコンクリートブロックを埋め込んだり、支柱下に土嚢を施す方法も浮き上がり防止に有効です。
被覆材の固定強化と劣化対策: ハウスバンドやビニール留め金具(スプリングクリップ・パッカーなど)が緩んでいないか点検し、屋根・側面の押さえバンドは台風前に必ず増し締めします。経年劣化でバンドが緩みやすい箇所は本数を追加することも検討してください。特に巻き上げ式の側面フィルムは揺れで破れやすいため、側面下部にも固定バンドを増設し、巻き上げパイプも動かないよう固定すると効果的です。ビニール被覆そのものも耐用年数を過ぎたものは早めに張り替えましょう。厚手で引張強度の高い農POフィルムは風で裂けにくい一方、骨組みに負荷がかかるため、フィルム更新時は骨組み補強とセットで行う必要があります。小さな破れは補修テープで早めにふさぎ、たるみがあれば張り直して風をはらまない状態にすることが肝心です。
開口部の密閉と補強: 台風接近時には出入口ドアや天窓・側面換気口を完全に閉じ、確実に施錠固定してください。内部への風の侵入を遮断することで、屋根が持ち上げられるいわゆる“風船現象”を防止できます。※「風通しを良くしよう」と両妻面の戸を開け放つのは逆効果で、瞬間的に内圧が上昇し骨組み浮き上がりの危険が高まるため厳禁です。出入口が古くてきっちり閉まらない場合は、カンヌキ(掛け金)や補助ロープで固定し、必要なら隙間目張りも検討します。換気用のビニールカーテンも事前に紐で縛るなど飛ばない処置を施します。また妻面の扉自体が飛ばされないように、開閉部周りに筋交いや支柱を追加して補強することも効果的です。
防風ネットの設置: 強風そのものを弱めるには防風ネットの活用も有効です。ハウス全体を覆うのは困難でも、例えば風上側の妻面前面に防風ネットを張れば直接の風圧をかなり緩和できます。また側面下部の巻上げ開口にネットを掛けておけば、万一フィルムがめくれても風の流入を一定程度抑制できます。防風ネットの風速低減効果は実証済みであり、各地の施設園芸マニュアルでも広く推奨されています。設置時はネットや支柱がしっかり固定されているか確認し、台風後は早めに取り外しておきましょう(ネット自体の損傷防止と光量確保のため)。
周辺の整理整頓と排水対策: ハウス周囲の飛散物を除去・固定することは被害防止の基本です。ビニールハウス周辺に工具や資材、ポリ容器、不要な廃材などが放置されていないか点検し、強風で飛びそうな物は事前に屋内にしまうか固定しておきます。重量物(農機具や燃料タンク等)はロープや鎖でしっかり縛り付けてください。さらに大雨への備えも欠かせません。ハウス周囲の排水溝は土砂や落ち葉で詰まっていないか掃除し、必要に応じて溝を掘り下げたり増設して排水経路を確保します。低い場所には土嚢を積むなど浸水防止策も講じましょう。これにより豪雨時の冠水で作物が傷むリスクや、地盤沈下による基礎緩みリスクを低減できます。排水設備の点検・整備は台風前に必ず実施してください。
換気扇の活用 (上級者向け): ハウスに換気扇が付いている場合、台風時にあえて換気扇を稼働させて内部を負圧(やや真空状態)に保つというテクニックもあります。内部気圧を下げることでフィルムのバタつきや剥離を抑え、屋根が吹き飛ぶリスクを下げられます。ただし停電で機能しなくなる恐れがあるため、過度な依存は禁物です(非常用電源の用意や停電時の代替策も検討が必要)。
以上のような対策を組み合わせれば、ハウスの耐風性・耐久性は大きく向上します。「ハウスの肩部分の強化」「基礎の浮き上がり防止策」「台風襲来前の応急補強」など、ハウス構造や立地条件に応じて適切な手段を導入しましょう。特に台風が多い地域では、平時からの準備と迅速な対応が被害軽減の鍵となります。
点検&補強チェックリスト(優先度と実施タイミング)
台風シーズン前後に見直すべき点検・補強項目を、日常的な点検と台風前後の対応に分けて整理しました。各項目に優先度や実施の頻度も付記しています。ハウス管理のチェックリストとしてご活用ください。
日常点検・メンテナンス(平時・定期的に実施): ハウス構造の劣化を常日頃からチェックし、シーズン前に備えます。特にサビ・腐食や緩みの点検は重要で、地際部の柱脚やボルト接合部など錆びやすい部分は定期的に除錆処理と防錆塗装を行いましょう。接続金具のひび割れやパイプの亀裂も見逃さず、早めに交換・修理します。また過去に被害を受けた箇所(曲がった補強材や折れた直管など)は重点的に補強し、再利用している曲がりパイプなどがあれば予防的に交換しておきます。これらの予防保全により強風被害のリスクは大幅に低減します。目安として月1回程度はハウス全体を見回り、異常がないか点検しましょう(梅雨明け~台風期にかけては頻度を上げる)。
台風シーズン前の準備(年1回・台風期突入前): 台風が多発する時期(例:夏~秋)に入る前に、ハウスの総点検と補強を行います。ハウス周辺の片付けを徹底し、飛びそうな物は固定。被覆材の張替え・補修もこのタイミングで実施します。劣化したフィルムは新品に張り替え、軽微な破れは補修テープで応急処置します。筋交い・タイバーの追加設置やアンカー増設など構造補強もシーズン前に済ませておきます。各資材(補強パイプ、ロープ、テープ、バンド等)も十分に在庫があるか確認し、不足があれば早めに手配します。この年1回の点検強化で、台風本番に慌てず対応できるでしょう。
台風接近前の対策(発生時・台風の1~3日前): 台風の進路・強さが予報で判明したら、台風到来の2~1日前を目安に直前対策を開始します。最新の気象情報を収集しつつ、以下の項目をチェックしましょう。
- ハウス周辺の飛散物は片付けたか?(優先度:高 風で飛ぶ恐れがある物は撤去・固定)
- 出入口や換気口は確実に閉めたか?(優先度:高 戸の掛け違い・隙間がないか最終確認)
- 被覆材にたるみ・破れはないか?(優先度:高 あれば直ちに補修またはフィルム切り離しも検討)
- ハウスバンドや留め金具は緩みなく固定したか?(優先度:高 屋根・側面の押さえを増し締め)
- ボルト・金具類に緩みやサビはないか?(優先度:中 特に要所のボルトは増し締めし強度低下に注意)
- 側面の巻上げ部はロックされているか?(優先度:中 スプリングやパッカーで完全に固定)
- 排水溝は詰まりなく機能するか?(優先度:中 大雨に備え溝を再点検し土砂を除去)
- 補強資材は必要数揃っているか?(優先度:低 筋交い用パイプ・ロープ・アンカー等の数を確認)
- 非常時連絡手段の確認(優先度:低 停電や通信障害時に備えた連絡網整備)
チェック項目に漏れが無いようリスト化し、完了したら印を付けていくと確実です。台風直前は焦りがちですが、優先度の高い項目から順に落ち着いて対策してください。
台風通過中~直後の対応: 台風通過中は人的被害防止のため決して無理な作業を行わないでください。暴風雨の中でハウスを見に行くのは極めて危険です。台風が去った後、できるだけ早急に施設を見回り破損箇所を修繕します。具体的には、緩んだハウスバンドを締め直し、抜けかけたアンカーがないか点検します。被害状況は市町村の農業担当課へ報告し、必要なら公的支援策(後述の災害復旧事業等)の相談を行います。作物への被害も確認し、必要に応じて追肥や植え直しなど今後の栽培計画を立て直しましょう。次の台風に備え、壊れた箇所は早めに本格補修しておくことが大切です。
上記チェックリストを活用し、平時から台風襲来時まで一貫した備えをしておけば、被害リスクは格段に減らせます。特に人的安全を最優先に、計画的な対策を心がけましょう。
補強・修繕に活用できる公的補助金・助成制度(2025年)
台風対策の実施にあたっては、公的な補助金・助成制度の活用も視野に入れてください。2025年度時点で利用可能な主な支援策には以下のようなものがあります。
強い農業・担い手づくり総合支援交付金: 農林水産省が実施する交付金事業で、地域農業の競争力強化や経営安定を支援するものです。耐風性能の高いハウス導入や老朽ハウスの建て替え等も対象となりうる交付金で、事業計画を作成し採択されれば整備費用の一部が助成されます。具体的な募集内容は年度ごとに公表されるため、自治体経由で最新情報を確認しましょう。
ローカル10,000プロジェクト(総務省): 地域資源を活用した新事業の初期投資を支援する補助制度です。地域の課題解決や雇用創出につながるビジネスが対象で、農業用施設整備にも活用できます。補助上限額は5,000万円(対象経費の1/2補助)と高額で、ビニールハウス建設費用についても条件を満たせば半額補助が受けられます。地域金融機関からの融資活用や新規性のある取組であること等が要件となります。ビニールハウスを使った新事業展開を検討中の方は注目の制度です。
災害復旧事業: 台風等の自然災害でハウスが被害を受けた場合に適用される公的支援策です。都道府県が窓口となり、被災施設の復旧費用を国庫が一定割合補助します。例えばハウスが倒壊した際の撤去費用や再建費用の一部支援が受けられます。発動には被災地域の要件がありますが、大規模災害時には補助率が引き上げられることもあります。被害発生時は市町村経由で早めに相談し、必要書類(被害写真や見積書等)を準備しましょう。
その他の支援制度: 各都道府県や農業団体独自の助成事業も存在します。例えば一部自治体では既存ハウスの耐風・耐雪補強に対する補助(補強資材費の1/2負担など)を期間限定で実施していた例があります。また農業近代化資金など低利融資制度も設備投資に活用可能です。最新の補助金情報は、地方農政局や各県農林事務所、JAの広報誌などで随時確認するとよいでしょう。
なお、補助金ではありませんが共済保険による備えも重要です。園芸施設共済はビニールハウスを含む農業用施設が台風等で被害を受けた際に補填を受けられる制度で、加入者は修繕費用の相当部分が共済金でカバーされます。また収入保険に加入しておけば、災害による収入減少も補填対象となります。補強対策とあわせて、万一の経済的損失に備える保険制度も積極的に検討してください。
公的支援を上手に利用することで経済的負担を軽減しつつ、安全なハウスづくりを実現できます。補助事業は公募時期や要件がありますので、日頃から情報収集に努め、使えそうな制度があれば早めに計画に組み込みましょう。台風シーズン本番を迎える前に、資金面の備えも万全にしておくことがプロ農家にとって大切です。

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出典:京都府|園芸ハウス台風対策マニュアル
出典:静岡県|施設園芸における台風・強風対策マニュアル
出典:農林水産省|パイプハウスの強度診断・補強マニュアル
出典:ホクレン農業共済|パイプハウスの防災対策と災害見舞金制度
出典:minorasu|台風対策!ビニールハウスの補強と保険
出典:セディアグリーン|ビニールハウスの台風・強風に備える対策まとめ
出典:与謝野町|農業用ハウス強靭化緊急対策事業
出典:静岡県|施設園芸 台風対策 チェックシート
出典:OMKG|ビニールハウスの台風対策と備え
出典:ファームコネクト|農業用ビニールハウスに使える補助金
出典:アグリジョブ|農業で使える補助金・助成金まとめ(2025年最新版)