農林業センサスを読み解く【2025年速報】
農林業センサスは、5年に一度農林水産省が実施する全国規模の基幹統計調査であり、農業の実態と変化を把握するうえで最も重要な調査です。農業経営体の数や経営規模、従事者の年齢構成、法人化の進展、耕作放棄地の状況など、日本の農業構造を示す基礎的な情報が網羅されています。
例えば、農林業従事者数は急速に減少し、高齢化が進んでおり、2000年には約240万人だった基幹的農業従事者数(農業を主業とする者)は、2024年には約116.4万人に半減し、うち65歳以上が約7~8割を占めています。
2025年の農林業センサス速報では、個人経営農家の基幹的従事者は102.1万人で、5年前から25.1%減少しました 。年齢別では、65歳以上が引き続き多数を占め、2020年時点で約69.6%、2025年でも約69.5%となっており、高齢化の度合いは依然として高い水準です(2015年は約64.9%)。
このように2025年版センサスから高齢化や担い手不足、法人化の進行、農地集約といった構造的な変化が鮮明に現れています。
2020年からの主な変化と構造の転換
前回2020年のセンサスと比べて、2025年版では以下のような変化が見られました。
① 経営体数の減少と法人化の進行
個人経営の農家数は大幅に減少し、2025年時点で約82万8千経営体となり、5年間で23.0%もの減少となりました。一方、法人経営体数は微増し、3万3千体と5年前より7.9%増加。農事組合法人などの団体経営体も2.9%増となっており、農業の担い手が個人から法人・団体へ移行する流れが加速しています。
② 高齢化の横ばいと継続的な構造問題
2020年時点で基幹的農業従事者のうち65歳以上は約69.6%を占めていましたが、2025年も69.5%と大きな改善は見られません。これは若年層の農業参入が伸び悩んでいる現状を示しており、依然として「高齢者が主力」である構造が続いています。
③ 耕作放棄地の拡大
統計上「荒廃農地」に分類される耕作放棄地は2025年時点で約9.4万haに達し、2020年の約8.7万haから拡大。農業経営体の減少と高齢化が進む中、利用されない農地が増加しており、農地の流動化と管理のあり方が問われています。
④ 経営体の大規模化
20ha以上の経営体が全体に占める割合は増加し、農業の規模拡大と産業化が顕著になっています。これは2020年センサスでも見られた傾向ですが、2025年ではより明確な「大規模 vs 小規模」の二極化が表れました。
⑤ 地域による担い手確保の格差
地域計画区域内で、今後10年間の耕作者未定地が3割以上(約134万ha)に達するという点も2025年センサスで明らかになりました。この傾向は地域ごとの人口動態や支援策の違いを背景に強まっており、今後は地域特性に応じた多様な施策が求められます。
耕作放棄地の最新状況
耕地面積そのものも減少傾向にあります。2016年から2025年までに耕地総面積は447.1万haから423.9万haに減少し、2025年時点で約4.24百万haとなっています 。
その中で、実際に作付けされていない「耕作放棄地」(統計上は「荒廃農地」)の面積は増加し、2023年には約9.4万ha(94,000ha)に達しています 。
これは農地全体の約2.2%に相当し、前年度から横ばいながら依然として高止まりしています。背景には農村地域の人口減少や担い手不足があり、今後も放棄地は増加する懸念があります。
高齢化と放棄地増加の要因・影響
農業従事者の高齢化は経営規模縮小や廃業につながり、耕作放棄地の増加を促しています。農林水産省は「農村では高齢化・人口減少が進み、生産現場の労働力確保が重要」と指摘しており、担い手不足に対応して外国人労働者の受け入れも進められています 。
高齢化と人手不足によって農地の流動化が進み、放棄地が拡大すると、国土の荒廃や食料自給力低下につながる恐れがあります。
実際に農家数減少や耕作放棄地増加は、農業の生産力や農村の維持管理能力に影響を与えており、農地利用の集約・効率化や担い手支援が喫緊の課題となっています。
法人・団体経営体の増加と構造変化
近年は企業参入や組織化も進んでいます。2025年時点で農業経営体(農家・農業法人など)は82万8千体で、5年前から23.0%(約24万7千体)減少しましたが、その一方で法人経営体は3万3千体となり、5年前から7.9%(2千体)増加しました 。
また、農事組合法人などを含む団体経営体も5年前比で約2.9%増加しています 。こうした構造変化により、経営耕地面積20ha以上の大規模経営体が全体の半数を超えるなど農業の大規模化・産業化が進行しています 。
家族経営の現状と今後の見通し
家族経営主体の小規模農家は引き続き減少しています。個人経営体(いわゆる農家)の数は10年間で約55万体減り、2025年でも主に高齢農家が多くを占める状況です 。
将来的にも高齢農家の引退や新規就農者の伸び悩みから、家族経営体は減少傾向が続くと見られています。
ただし、国や自治体は地域計画や新規就農支援を通じて担い手確保に努めており、都市農業や兼業・複業農家の増加など経営多様化の兆しもあります。家族経営農家の数自体は減少しても、生産性向上や経営承継の取り組みにより効率的な農地利用が期待されます。
10年後の耕作者未定地の割合
地域計画の策定状況からは、10年後の農地利用にも暗い見通しが示されています。政府集計によれば、地域計画区域内約422万haの農地のうち、10年後の受け手が明確でない農地は約134万haに上り、全体の31.7%に相当します 。
さらに最新分析では、現段階で耕作者が確保できていない農地は約36%(約38万ha)に上り、確保済みでも多くは現在高齢者が担い手となっているため、実質的に耕作者未定となる恐れのある農地は最大で6割近くに達するとの指摘もあります 。
このように、高齢化が進行すると10年後には膨大な面積の農地が耕作者未定となる可能性があることが明らかとなっています。
あわせて読みたい記事
- 施設野菜の高温障害とその対策(設備導入例)
- 農家の夏作業をラクにする!暑さ対策便利グッズをご紹介
- ぶどう棚の設置費用と相場感|費用を抑えるコツも紹介
- ハウス栽培の初期費用はいくら?設備投資と収益回収までの目安や作物ごとの特徴を解説
- 「ビニールハウスのフィルム張替え費用相場|張替え方法と耐用年数・減価償却も解説」
- 農地の賃借は相対から農地中間管理事業を介した賃借に移行~令和7年4月より~
- 農業の世代交代を支援する新たな取り組み 親元・第三者継承型の就農支援策
- 茨城の農業をご紹介|農業産出額や地域ごとの特色
- 台風シーズンに備えるビニールハウス補強・修繕チェックリスト
- 農機レンタルの仕組みや課題、賢く利用する為のポイント
- 農家が始める“加工品づくり”|6次産業化のリアルな収支と工夫
出典:農林水産省「2025年農林業センサス」
