認定農業者制度について メリットや認定までの手順などを解説
執筆者:髙木 憂也
メガデル運営(株式会社タカミヤ)
認定農業者制度とは、農業経営基盤強化促進法に基づき、市町村が定める「基本構想」に沿った「農業経営改善計画」を作成し、認定を受けた農業者のことを指します。言い換えれば、将来の農業経営をどのように発展させていくかを具体的に示し、その計画が合理的かつ実現可能であると自治体に認められた農業者です。認定を受けることで、農業政策の支援対象として優先的に位置づけられるため、補助金や金融支援で優遇を受けられるのが大きな特徴です。
この制度は「担い手の育成・確保」を目的としており、地域農業の将来を担う経営体を支えるために設けられています。認定農業者になることで、自身の農業経営が明確化されるとともに、自治体や金融機関からの信頼度が高まり、より有利な条件で経営資源を獲得できる道が開けます。
認定農業者のメリット
1. 補助金・助成金の優遇
認定農業者であることは、国や自治体が実施する多くの補助事業への申請要件や優遇条件になっています。たとえば「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」や「経営体育成支援事業」など、認定農業者を対象とした補助金制度が複数存在します。これにより新しい施設の導入や機械購入、環境保全型農業の推進にかかるコストを軽減できます。
2. 金融支援の強化
日本政策金融公庫や農協系金融機関からの融資において、認定農業者であることが条件となる低利融資制度があります。たとえば「スーパーL資金」など長期低利の融資は、農業経営を安定させる上で大きな後押しになります。
3. 税制上の特典
農地取得や設備投資に関連する税制優遇が受けられる場合があります。これにより初期投資の負担を軽減しやすくなります。
4. 行政・地域からの支援
認定農業者は、市町村や農業委員会からのサポート対象として優先されるため、農地利用集積や農業次世代人材投資資金などの活用もしやすくなります。また、自治体によっては独自に認定農業者向けの加点制度や支援事業を設けているケースもあります。
5. 経営の見える化
計画作成を通じて、自分の農業経営の方向性や課題が整理されます。これにより日々の営農判断がしやすくなり、家族や従業員と経営方針を共有する基盤にもなります。
認定を受けるまでの流れ
1. 経営改善計画の作成
まずは5年程度を目安にした農業経営改善計画を作成します。計画には、営農面積の拡大、販売額や所得の目標、導入する機械や施設、経営効率化の方法などを具体的に記載します。地域の基本構想と整合していることが求められます。
2. 計画の提出
作成した計画は市町村役場(農政課など)に提出します。自治体の担当部署が農業委員会や関係機関と連携し、計画の内容を審査します。
3. 認定基準
認定の条件は「計画が合理的かつ達成可能であること」が基本です。具体的には、計画数値が現実的か、収益性の向上や持続可能な営農につながる内容かどうかがチェックされます。
4. 認定
審査を通過すれば晴れて「認定農業者」となります。認定証が交付され、各種支援策の申請が可能になります。
5. フォローアップ
認定後も毎年の実績報告や必要に応じた計画の見直しが求められます。計画と現実の差を埋めながら、持続的な経営改善を進めていくことが重要です。
事例と自治体の支援策
全国各地で認定農業者を対象とした多様な支援が行われています。たとえば北海道では大規模施設園芸の導入に対して補助率の高い支援を行っており、認定農業者であることが採択の前提条件となっています。九州の一部自治体では、認定農業者に限って新規就農者向け住宅支援や機械導入補助を優先的に提供しています。
また、果樹農家向けには高温障害対策や省力化設備の導入に対して補助が出る事業があり、認定農業者が優遇されています。水稲農家の場合は、収量安定や環境保全型農業の導入で加点対象になる場合が多いです。
自治体独自の取り組みとして、千葉県では認定農業者向けの資金繰り支援制度を用意しており、燃油価格高騰対策事業などと組み合わせて利用することができます。山形県では施設園芸農家に対する燃油高騰対策事業を認定農業者優先で展開しています。
申請を迷っている方へ
「申請書作成が面倒そう」 「認定を受けても意味があるのか」と感じる方も少なくありません。しかし、補助金や金融支援の活用、地域内での信頼性の向上を考えると、認定農業者になることは経営の安定と発展に直結します。特に新規就農者にとっては、資金調達や設備導入を有利に進められる大きな後押しとなります。
また、認定農業者になる過程で経営計画を策定すること自体が、自分の農業の方向性を整理するきっかけになります。長期的に農業を続けていく上で、必ず役立つ経験になるでしょう。
まとめ
認定農業者制度は、農業者の経営力強化を支える重要な制度です。制度の趣旨を理解し、自らの経営改善計画を策定して認定を受けることで、補助金や金融支援の優遇を受けられるだけでなく、経営の方向性を明確にすることができます。全国どこでも申請が可能であり、自治体の担当部署も積極的にサポートしてくれるはずです。
もし申請を迷っているなら、一度自治体の農政課や農業委員会に相談してみましょう。認定農業者になることが、持続可能で強い農業経営への第一歩となります。

あなたの理想の農業設備を施工会社へ直接依頼
メガデルはビニールハウスなどの農業設備施工を実際に施工を行う会社に直接依頼できるサービスです。あなたの想い描く営農をサポートします。
会員登録・施工依頼を始めるあわせて読みたい記事
- 2025年主要農業補助金・助成金の概要
- 施設野菜の高温障害とその対策(設備導入例)
- 農家の夏作業をラクにする!暑さ対策便利グッズをご紹介
- ぶどう棚の設置費用と相場感|費用を抑えるコツも紹介
- ハウス栽培の初期費用はいくら?設備投資と収益回収までの目安や作物ごとの特徴を解説
- 「ビニールハウスのフィルム張替え費用相場|張替え方法と耐用年数・減価償却も解説」
- 農地の賃借は相対から農地中間管理事業を介した賃借に移行~令和7年4月より~
- 農業の世代交代を支援する新たな取り組み 親元・第三者継承型の就農支援策
- 茨城の農業をご紹介|農業産出額や地域ごとの特色
- 台風シーズンに備えるビニールハウス補強・修繕チェックリスト
- 農機レンタルの仕組みや課題、賢く利用する為のポイント
- 農家が始める“加工品づくり”|6次産業化のリアルな収支と工夫